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下絵付けとは
下絵付けは、絵付けの中でも陶芸の代表的な装飾の一つです。 素焼に絵付けをして、釉薬を掛けて本焼きをする方法で、釉薬の下に施された絵や文様であるため、絵柄が釉薬の層の下に書かれたものを総称して下絵付けと言われます。
一方、もう一つの絵付けの技法が、上絵付けで、釉薬を掛けて本焼きされた上に上絵用の絵の具で絵付けがされます。赤絵や色絵などが上絵付けで、上絵付けは、800℃で焼成されますので、低音特有の発色の良さが特徴になります。
上絵付けは、本焼きをして絵付けをして、再度焼成が必要となりますので、一般の陶芸教室などでは上絵付けは出来ないケースがほとんどと思います。それと、上絵付け絵の具は湿度を嫌いますので、窯の空焚きや、上絵付け専用窯が必要になります。
焼成温度は、本焼きで、1260~1300℃ 上絵付けは800度位で焼成されます。
下絵付けは、釉薬を掛けたり、高温で焼成がされますので、色が変ったり、変化をします。 ですから、下絵の具の代表的な絵の具としては、呉須と弁柄・鬼板などが古来から使われてきました。 前者を染付け、後者が鉄絵といわれます。今は、下絵の具は科学的に顔料を使って、配合されたものも販売されており、沢山の色が使えるようになってます。
染付けとは

ご家庭にある茶碗など、青で絵が描かれた陶器や磁器があると思いますが、これが染付けされた器です。 色は青色や黒で、絵付けは、この単色の濃淡だけで絵付けされます。
この技法は、14世紀頃に中国で確立されたそうですよ。 日本へは、中国から、朝鮮に伝わり、朝鮮人陶工によって九州で再現されたとのことです。
本格的な日本における染付けは、17世紀初頭に伊万里焼きから始まり、世界中に輸出されて好評を得たそうです。伊万里焼きは伊万里港から、運ばれたため、伊万里焼きと呼ばれたと聞いたことがあります。
染付けの材料 呉須
染めつけは呉須で描きます。 呉須は、酸化コバルトの主成分の鉱物です。陶芸ショップには、粉末のものや、チューブに入ったものが販売されてます。 色は、黒、青(藍)で、自然の呉須は少なく、人工的に配合されたものだそうです。
呉須は濃淡の表現範囲が広く、繊細な表現が可能になります。
チューブに入ったのものはメーカーで、摺られているとのことで、初心者には使い勝手がいいかも知れません
染付けの基本的な道具
- 呉須 古代呉須や、旧呉須(粉末)、又は、チューブ入りのもの

- 乳鉢と乳棒、ガラス板と角乳棒、有田では、陶器の茶碗と乳棒を使うそうです。このガラス板は700円です。下の方の黒縁のあるものは、百円ショップの鏡です。 ガラス製です。 これであれば、青呉須、黒呉須ようにもっても大丈夫、予算的に問題なしですね。
- 乳棒は、角乳棒と呼ばれるもので、前後に軽くアールがついていて、平板の上でするように設計されてます。自作するのであれば、磁器で作ります。 購入であれば、350円ですが、送料の方が高くなります。
- 小皿やそば猪口
煮出した、濃いお茶と水差しにのプラスチック容器 中には、入れて3ヶ月経った煎茶が入ってます。 数年たったお茶ですが、今でも腐った臭いもせずに、染付けで使ってます。 少なくなったら、濃いお茶を足していきます。
- 面相筆 数種(骨描き用)、
- だみ筆(大きめ、最低でも一本、この写真には入ってません。)
- 対立て筆
- 長刀筆 (しなやかな長い線を描くのに使います)
呉須の溶き方と調整
- Step 1. 乳鉢やガラス板で、呉須を少量取り分け、煮出したお茶(煮出して、3ヶ月ほど置いたほうが良いと聞いてますが、初心者は取り敢えず濃い目のお茶で)を加えて、摺ります。粉末のざらざら感がなくなって来て、トロッとするまで摺ります。
窯元では、一日8時間、1週間程擦るそうです。 いい染めつけの秘訣はここにあるようです。 テレビを見ながらでも、取り敢えず摺り込みあるのみ。。綺麗な発色と、絵付けを夢見て。。 - Step 2: Step 1で出来たきめ細かな呉須で、2種類の呉須を作ります。 骨描き用と、だみ用(2種類)骨描き用は、トロットした呉須に少し、お茶を加えた程度。
下の写真の様に、ガラス板に載せて、濃い分、又、ガラス板の面積が大きい分、乾燥が早くなります。 下の方に、茶溜まりを作っておけば、濃度を常に調整しながら、骨描きが出来ます。 乳棒で常に摺って良く混ぜます。 水分がどうしても上に上がって、薄くなります。
- だみ用は、お茶に呉須を加えた感じで、シャバシャバの液体状に。薄い墨みたいな感じですかね。 いずれにしても、素焼に描いてみて濃さを判断します
- だみ呉須は、2種類濃さのものを作ります。 濃さは素焼きに描いて、経験で濃さを覚えていくしかありませんが、水墨を薄めた感じでしょうか。素焼に載せたら、水溜りが出要る感じ。
- こんな深めの蓋付のガラス容器が良いかと思います。 呉須はすぐに沈殿しますので、常に筆で、攪拌して使います。この方がこぼれ難いし、始末も簡単ですね。
お茶で溶く理由は、お茶に含まれるタンニン酸が、呉須に含まれる鉄分と結びついてタンニン酸鉄が作られるそうです。、これで、呉須の発色が良くなるようです。 でも、最近の呉須は人工的に合成されたもので、水で溶いても発色は大丈夫のようです。
もう一つのお茶で溶く理由は、粘り化が出て描き易くなるようです。
筆の種類と使い方
染付けの出来、不出来は適切な筆を持つことが必要です。 弘法筆を選ばずと言う言葉がありますが、絵付け初心者は筆選びから。少なくとも、面相筆数種と、だみ筆は1本は絶対必要です。 沢山描くわけではありませんので、一生物ですので、いい筆を購入しましょう。
面相筆

面相筆: 骨描きに使います。 骨描きは、葉っぱの絵であれば、輪郭や葉脈などをです。 ですから、面相筆でも、穂先の細い面相筆を使います。 線の細さや何を描くかで、筆の選択は代わりますが、極細と細いもの2種類は必要かと、骨描き用の呉須の濃さも、筆で書いて見て調整をする必要があります。
だみ筆
だみ筆(彩色筆): 葉っぱの例をとれば、骨描きで縁取られた葉っぱの面を塗り潰すための筆です。薄く溶いた呉須を、この大きな筆(毛が沢山付いている)筆で、スポイトの様に、呉須をたっぷり含ませんる事が出来ます。 Youtubeなどで見たことはありませんか。 職人さんはたっぷり、呉須を筆に含ませ、根元の部分を絞って、呉須を描きたいところに垂らしてそして、それを広げていきます。 染付けをやろうと思えば、だみ筆は必ず一本は必要です。 予算に合わせて購入しましょう。 出来れば、大きいほうがいいですが、大きいということは、毛が多いということ、即ち高価です。
だみとは漢字で、濃みと書きます。 だみの濃さは、2種類程、別々の容器に作ります。これで、グラデーションを出します。
付立て筆
付立て筆は、例えば、葉っぱであれば、骨描きなしで葉っぱを描いたりするのに使います。 これを骨のない描き方と言うことで、没骨(もっこつ)描法といいます。だみ用の呉須で、葉っぱを描きます。 その際は、HBなどの油性の多い鉛筆で葉っぱの輪郭をなぞってから、内側を付立て筆でぬります。 鉛筆の油分が土手になり、薄い呉須の広がりを押えてくれます。 これも、やはりテストピースで試した方がいいですね。
絵の苦手な方は
陶芸をやっていて良く聞く言葉に”絵心”があるないと言うことがありますが、あんまり関係ないですね。僅かな面積に描く、ワンポイントの絵にそんなものは要りません。
次のやり方をやれば、下書きはかんt
図案集、図案
図案: 何もなく、頭で考えて描くには難しいですね。 図案集や、自分のイメージにあった図案を準備しましょう。本は購入しなくとも近くの図書館に行けば、沢山の本があります。 コンビニに行って、好きなページをコピーしましょう。 パソコンでも、検索すれば、著作権フリーの素材がありますから、白黒で、印刷しましょう。
百円ショップに行って、染付けの器を購入しましょう。 自分の作品にあったものを探して、それを参考にします。(冒頭の写真)
トレーシングペーパー
図案を見て、フリーハンドで描けたらいいのですが、難しいのであれば、トレーシングペーパーに移しましょう。鉛筆で。。
超簡単。。説明など必要ないと思いますが、図案に重ねて、移すだけです。
チャコペーパー
こんな便利なものがあります。日本画の下絵を描くのに使うようですが、言ったら、色つきのカーボン紙みたいなものです。カーボン紙でもいいでしょうが、カーボン紙は、油成分を多く含んでいるように思います。
トレースしたものの下に敷いて、上から、鉄筆で、なぞれば、絵柄が転写できます。 超簡単
いろんな種類があるようで、陶芸用と言うことを伝えて購入しましょう。 趣味の店や画材店で売ってます。 日本がの下書きにもつかうようです。
鉄筆
これが鉄筆。。なければ、ボールペンでもいいです。 トレースを黒の鉛筆でやったら、赤のボールペンでなぞったらいいですね。
なぞった部分が分かります。これであれば、高い鉄筆を買う必要はありません。
トレーシングペーパーの裏に、柔らかい鉛筆でなぞって、そして、作品に押して、擦ってやれば、鉛筆の跡が付きますね。
その後、3Hくらいの鉛筆でなぞれが転写完了です。。。ある程度、図のポイントが分かれば、原画を見て鉛筆で書いたら簡単です。 線がよれよれでも大丈夫、後で、呉須で描くときにその線をガイドに、シャープな線を描きます(描くように努めます。。)
下絵付けの作業のコツYoutube動画
Youtube動画: ”陶芸下絵付け(染め付け)の基本技能と絵付けの練習作品”は次のビデオを見て下さい。
Youtube動画: ”小皿とぐい呑みの下絵付け(染付け)骨描きと濃み(だみ)の練習”は次のビデオを見て下さい。
染付けの練習方法
線描き・だみの練習は、墨汁などで、自分の陶芸用に使う線の練習を紙でします。紙の上がはるかに易しくできます。 垂直線、水平線、丸など、少しずつ 難しいものを練習していきましょう。素焼は吸水性が高いため、すばやく描くことが必要です。
2度描きはだめです。 濃さが変って筆跡が残ります。 だみのグラデーションは筆のスピードや、呉須の溜り加減で、濃淡を表現します。
墨を薄めて、だみの練習も出来ますね。 墨を垂らして、溜りを筆先で引っ張ります。筆先を紙には当てません。
次は、素焼の破片などを使い、骨描きのまっすぐな線から。。これで、呉須の濃さが分かります。薄くなく、かすれがなく。濃過ぎると毛が滑らず、かすれます。 筆から、呉須がスムーズに供給されないためです。
この作品は、以前に描いた失敗作ですが、骨描きはかすれ、均一ではありません。 線が死んでしまってます。葉っぱのだみの部分も、筆跡が残って汚い感じ。。これも仕方ないですね。 呉須を乳鉢で、数分摺って描いてますので、粒が相当残ってますので、スムーズに線やだみが出来るわけありません。
京都の瑞光窯や、交野の西郷窯で教えてもらって、少し、コツが分かって来ました。と言っても、初心者の域からでてませんけど。。
滲み、失敗の修正
練り消しゴムを使います。 呉須が指について汚したときや、だみがはみ出したりしたとき、ある程度消すことは可能です
下のえびの尻尾の周りを練り消しで、修正しました。 僅かなひげや汚れが取れていると思います。 違いが見えますか? 色目の違いはライティングの関係です。無視して下さい。
作品の取り扱い
絵付けの出来た作品は、出来るだけ触らないようにします。特に絵付けをした部分は絶対に触りません。もし、移動などが必要な場合は、ラップで包んで、ハンドルします。 ラップは、一度剥がしたら、新しいものでラップします。ラップについた呉須で、他の部分が汚れます。
染付け完了品ギャラリー
下書きの鉛筆はそのままにしておきます。本焼きで消失します。
釉薬は、3号石灰透明釉を掛ける予定です。 本焼きで、どんな色に仕上げるかが楽しみです。