スリップウェアー(化粧土技法)で広がる陶芸の世界


陶芸で知らず知らずに使っている技法。 スリップウェアー。 矢羽文様の技法などを学んで、更に技術領域を広げよう。

スリップウェアーの技法:

スリップウェアーのスリップとは化粧土の事ですね。 プログを読んでいただいている方はもうすでに、良くご存じですが。 陶芸をやっている人は、このスリップを大いに活用すべきですね。 少なくとも、白、黒の化粧土は常備したいですね。 そして他の色の化粧土が必要であれば、その顔料を混ぜてやれば、スリップウェアーに更なる広がりが出ます。 スリップウェアーには、多彩な技法がありますね。 主なものをリストすると。

  • 粉引き(こひき)
  • 刷毛目
  • 線彫り・掻き落とし
  • 櫛目
  • 刷毛目鉄絵
  • 飛びカンナ
  • モカウェアー(モカウェアー技術を読む
  • テクスチャ―リング(蚊帳目など)
  • 三島手(象嵌)
  • マーブル文様
  • フェザーコーム(矢羽文様)

良く見ると、私たち陶芸愛好家が駆使している技術ですよね。

スリップウェアーの由来:

陶芸の歴史は、土器、須恵器、陶器を経て磁器(白磁)と言う経過を経てます。白磁は6世紀の中国で初めて焼かれたと言われます。 中国で発達した磁器製作の技術が朝鮮半島に伝わり、高麗時代末期に、最初の白磁が焼かれ、李朝白磁として名品を生み出して行きます。

スリップウェアーは、イギリスで17世紀から、19世紀に多く焼かれた伝統的な焼きもです。 この技法はもともとは大聖堂や、修道院のタイルを作り技法だったらしいですが、16世紀の宗教改革でこの技術が日常雑器に使われるようになったんだとか。。

そして、その技術が、19世紀、一冊の本から、日本に広まったんだって。(古風な英国陶器と言う、イギリスの本。そこから、柳宗悦、バーナード・リーチなどによって日本に広まったそうですよ。

それでは、最近は出来たスリップウェアーの作品の一部を紹介します。

フェザーコーム(矢羽文様)

最近新たに取り組んでいるテーマで、スリップウェアーの中でも最も難しい技法と思います。 この作品は、トライアル開始してから失敗続きの中で、何とか矢羽文様と言える作品が出来ました。

化粧土の上にスリップで描かれた文様が矢の羽に似ていることからこの様に呼ばれてます。 英語では、Feather Comb。 combは櫛です。

作陶を完了した段階です、余り出来は良くないと感じていたのですが、意外にも 白バックに黒化粧土の矢羽文様がくっきりと浮かび上がりました。 こんなに綺麗に出るとは、想定外でしたね。 ”な~~んだ。 出来てたじゃん”って感じ。左右の両端にもう一本ずつ線を入れて置けば、もっと良かったですね。


半磁土をベースに、白化粧土と黒化粧土を使って文様を出してます。主な手順は以下の通りです。

  1. 白化粧土を柄杓掛けか、浸し掛けをします。刷毛塗りでは、均一な厚みにならない事と。 少し厚めに掛けたい。
  2. 白化粧土が乾かないうちに、黒化粧土をゴム製のイッチンで線を並行に入れます。
  3. 作品を90度回転して、柔らかい竹ひごや、鳥の羽の芯で、先ほど引いた線と直角に上からと下から、下から上に交互に線を入れてやります。上から下へ線を引き、そして180度回転させて、間を上から下へ引いても良いです。
  4. そうすると、白化粧土の上で黒化粧土が引きずられて、矢の羽のような文様になります。
  5. 作業を手早くやることが大事。化粧土が硬くなり始めると文様が出ません

文書で書くと簡単に思えると思いますが、実際にやって見ると結構難しい技術です。この作品は、直径10cm 5mm厚のたたら板を作り、お皿を型にしてます。 スリップの文様を施して、型に入れてもいいです。 平面の方がスリップが塗り易いかも。 この場合は、スリップの文様描きが終わってから、数時間放置して、化粧土のべたつきなくなるまで待ちます。 そして型に入れますが、化粧の面は出来るだけ触らない方がいいでしょう。

YouTubeに動画をアップしてますので、是非見て下さい。

マーブル文様(大理石文様)

写真では、墨流し文様の綺麗さが伝わりませんが、白、黒、ピンク、緑の文様が鮮やかです。 惜しいのは、トルコブルーの発色が弱く、ほとんど目立ちません。 これは、だいぶ以前から気付いているのですが、今回も顔料の量を増やすのを忘れました。 顔料の発色はメーカーや顔料によって違いますが、5~10%程度が目安となります。 テストピースを作った方が確実です。

技術的には、かなり易しい技法ですが、要領さえわかれば、世界でOnly Oneの作品が簡単に作れます。

簡単に作り方を説明します。

  1. まず、お皿などをつくり、削り作業を終え作陶を完了します。
  2. まず、ベースとなる化粧土を浸しか、柄杓掛けをします。化粧土の量が余りないのであれば、刷毛塗りでもいいでしょう
  3. 少し緩めの化粧土を厚く塗ります。
  4. 他の色の化粧土、スポット的に点々と塗ります。マヨネーズか少し、緩い硬さが良いでしょう。硬すぎると流れてくれません。プラスチックのマヨネーズ入れ見たいな容器があれば、やりやすいですよ。 YouTube動画に出て来ます。
  5. 作品を上下左右に振ったり、傾けたり、回転させて、化粧土を流して混ぜ合わせて行きます。 出来れば、作品が型に入っていたり、亀板などに作品を載せておきます。そうすると、自然に写真のような大理石に似た文様になって行きます。 やり過ぎると折角の文様が汚くなって行きます。 ほどほどに。

YouTube動画を参考にしてください。

赤粘土に白のスリップで網目文様

この作品は、YouTubeにアップしたもので、むしろ、スリップトレーラーのテスト用に作ったものです。 縦横の網目よりも、もう少し、古典的なスリップの文様を入れたら、をもう少し、暖かみのあるスリップウェアーになったと思います。
こちらの方は、いつでも作れますね。

こちらは、織部釉を霧吹きで薄く描けてます。 赤土が少し赤黒く、そして、白化粧土の網目が少し緑を帯びてます。 少し薄かったかな? 織部の総掛けでもいいでしょうが、赤粘土の織部は余り好きではありません。 でも、白化粧土は、透明感のある緑になりますのでこちらもありですね。

こちらは、飴釉の柄杓掛け。こちらの方がスリップウェアーの雰囲気が良くでます。 先週の作品で、下地のスリップを、白化粧土に弁柄を混ぜたものがありますので、こちらは石灰透明で仕上げて色目の違いを見たいと思います。一寸、弁柄を入れすぎましたので、黒っぽく仕上がると考えてます。

スリップトレーラー制作 & 使い方の留意点

スリップトレーラーの新作をしました。 スリップトレーラは、化粧土で線を引いたり、文様などを描くための道具です。 インスタントコーヒーのアルミニウム缶に、千枚通しなどで孔を開け、そこにビニール製のストローを少し差し込み、瞬間接着材などで接着します。 ですから、開ける穴はストローの外径と同じ位にします。 そして数ミリ差し込み、後はストローの周りに接着剤塗り、固定します。
出来れば、ビニール製の内径の4mm程度のものが良いかと思います。

こちらもYouTubeに動画をアップしてます。 良ければ見て下さい。

このトレーラーは、イッチンなどと違ってあくまでも、化粧土の自重で線を塗布するもので、アルミ缶を絞ってはダメです。

その為の重要なポイントは、化粧土の硬さが最も大事で、自然にスムーズに出てくる硬さにスリップを調整します。 そして以下のポイントを守って下さい。

  • 化粧土の硬さ。 容器から取り出すとき、上水を除いて、下に沈殿している硬めの部分を使います。
  • 化粧土を乳鉢などに取り分け、しっかり攪拌します。 ノズルの目詰まりの原因になります。
  • そして、トレーラーに入れて、傾けて化粧土の出方を見ます。 出にくいのであれば、化粧土に上水を足し攪拌します
  • 出た化粧土は、半丸に盛り上がる必要があります。 フラットになるのであれば、薄過ぎます
  • 実際に線を引くときは、化粧土を粘土の表面に当てて、化粧土を引っ張ってやるようにすると均一の線が引けます
  • 蓋はしません。 蓋をすると、内外の気圧が変わって、内側の気圧が下がって、出が悪くなります。
  • 途中で出が悪くなったら、ノズルが詰まったのか、ノズルの出口のところの化粧土が乾き始めたり、溜まったりした場合です。
  • 作業中は定期的にノズルの先を濡れタオルで綺麗にしてやります。

これで、上手く出来ない人は、柔らかいプラスチック製のマヨネーズディスペンザーや、陶芸用のイッチンなどを使うのも方法です。

陶芸用のイッチンは、口金を替えることで、線の太さが変えられます。 問題は価格が高い事で、シャープペンシルの先を使うことも可能です。YouTube動画の中に出て来ますので、イメージはつかめると思います。 イッチンの先の空色のものがシャープペンを先をノズルとして使ったものです。