このブログでは初めてですが、今年から、通い始めた”京都陶芸スクール”の記事を書きます。 今までの陶芸教室のレベルから、更に高みを目指したいと言うことで、京都の清水焼の窯元が主催するこの教室に4月から通学を始めました。
と言うことで、”ピカピカ”の一年生。 私の課題である染付の”だみ”の練習について紹介します。この陶芸スクールの最大の特徴は、現役の職人さん達が教えてくれることです。 絵付けは、絵付け師の現役のプロが個人指導をしてくれます。
陶芸教室では、絵付けを出来る先生は少ないし、少なくともプロの絵付師のレベルの染付を出来る人は皆無ではないかと思います。
絵付けの基本道具
基本的な道具をもう一度見ておきましょう。
呉須、筆(面相筆、付き立て、だみ筆)、そして、鉄の剣先(修正用)、呉須3種の入れ物(骨書き、濃いだみ、薄だみ)、手回し轆轤
だいたいこれだけの道具があれば絵付けが出来ます。 だみでもっとも大事なのは、だみ筆と言われる上の写真の右の太い筆です。 これでも、”中”のサイズです。 価格は非常に高くて、約4000円程。 本気で絵付けをやるのであれば、是非、投資をしたい道具です。
呉須の種類と濃度 (素焼き片の活用)
左のような素焼き片を準備しておきます。 出来れば、焼成サンプルを作っておいた方がいいのですが、呉須の濃度の調整の為には絶対に必要です。呉須は、骨書き用と言って線を引く濃さの呉須が必要です。呉須をお茶や水で薄めてやって、描いて見て、筆先が素焼きの肌に触れた時、引っかからず、スムーズに線が描け、少し、盛り上がる濃さを探します。
呉須の線の下地の色が見えるようでは薄過ぎます。
そしてだみ用の呉須ですが、濃いだみと薄だみを準備します。 骨書き用の呉須をさらに薄めて、2種類のだみを作ります。 テストピースに骨書きをして、その上を濃いだみで線をひけば、下に骨書きの線が見える程度の濃さと、さらにそれを薄めた薄だみの呉須を準備します。 この濃さは好みですから、いろんな濃さで描いて見て下さい。
だみの練習 図形 ”市松文様”
これは6寸ざらです。 練習と言ってもこのような作品を準備します。 素焼きの平板では、カーブが無いために実践的ではありません。
このお皿に分割線を鉛筆で引きます。丸は手回し轆轤に載せて引きます。縦の分割線は、厚目の紙に分度器で、適当に分度器で分割線を引きます。 このお皿の写真をフラットにした感じです。これは16分割されてます。
鉛筆で下書きしたら、はたきで鉛筆の粉を取ります。 粉が邪魔になって絵付けが上手く行かない要因となります。
線描き 轆轤線と分割線
この市松は、だみの練習だけではなく、骨書きの練習にもなります。
左のように轆轤線を入れるのも、結構難しくて、線が2重になったり、太くなったり、ずれたりします。
轆轤線は、骨書き用の面相筆を使います。当然、骨書き用の呉須を使います。 右手で筆を水平に持ち、轆轤を左回転させて、左上の辺りで線を引きます。 筆先が絶対に動かないように、右手の手首辺りを左で支えます。線は、2~3回転させて濃さを整えます。
分割線は、筆で真っ直ぐに下書きの線をなぞって行きます。
線描き(骨書き)は必ずします。 だみの呉須の堤防になってくれるからですよ。
だみの練習
内側から、一桝ごとにだみして行きます。だみは筆先を作品の表面に触れないように。 それでは、どうやるのと思いますよね。 筆は大きく沢山の呉須を含んでますから、呉須を垂らして溜め、その溜りの呉須を作品を傾けて、そして筆先で引っ張りて広げて行きます。
失敗の修整
これはわざと失敗してます。呉須の量が多くて、骨書きの枠線からはみ出しました。
その修正は、剣先かんなや、鉄の削りかんなで、はみ出した部分を削り落としてやります。
だみ筆の機能と使い方
だみ筆は、スポイトのような機能で、だみを筆先に供給してやるだけではなく、呉須を逆に吸う機能もあります。筆先の沢山の毛が呉須を含みます。 筆も立てると呉須が流れ出し、逆に寝かせると、呉須を吸います。
桝を1つ飛ばしでだみします。 左の写真がだみ筆で、筆先を曲げているのが分かると思いますが、これで、呉須の量が調整出来ます。筆先を立てれば、呉須が流れ、倒せば、流れが止まります。筆を真っ直ぐに立てると毛に含まれる呉須が一度に出て、洪水になります。 毛先を曲げることで、筆を水平の持っただけで、筆先の半分は垂直に、そしてあと半分は水平になります。これで、供給される呉須の量を調整できる仕組みです。
これがポイント。 だみは呉須をしっかりと溜める事。 そして、素焼きの表面は筆先で触らないこと。 その為には、たっぷりと呉須を溜めます。
だみ筆は、毛先を根元まで、たっぷりと付けます。 そして、根元を少し容器の縁で、擦って呉須の量を減らします。 そして、毛先はちょっと容器にあてて、毛先の呉須が多くなり過ぎないようにします。 この毛先の呉須の量がもっとも大事で、少ないと溜りができず、逆に多いとドバっと流れて枠からはみ出します。
呉須の吸い上げ
呉須の溜りを毛先で引っ張ってやって広げて先後まで来たら、筆を90度回します。すると、毛先が水平に近くなり、余分な呉須が、筆につい戻されます。
練習の完了結果

ほぼ全体のだみが出来ました。 写真では分かり難いですが、濃いだみと薄だみをやってます。 濃いだみは筆跡や、呉須の斑がほとんど分かりませんが、薄だみは難しい。 少し、呉須の溜りが出来るとそれが斑になります。
でも大丈夫ですよ。 斑がある桝は、もう一度だみしてやれば綺麗に消えます。 薄だみであれば、一回目とおなじように、呉須をたっぷりと溜めて、それをお皿を少し傾け、筆先で溜りを広げてやって、最後は、筆を寝かせることで、余分な呉須が筆に吸い上げられて、綺麗にだみされます。

これが市松文様のだみの最終の仕上がりです。 如何でしょう。 だみのあの嫌な斑や塗り残しは出てません。 濃いだみと薄だみの濃さの差がどの程度出て、又、一見、筆斑がない部分が本焼きでどんな仕上がりになるか分かりませんが、多分問題ないレベルになると思います。
この磁器のお皿は、裏側に別の文様を入れ本焼きしたいと思います。 焼成は還元。 釉薬は、磁器の場合は、石灰透明。 陶土であれば、土灰で仕上げます。
だみの絵付けまとめ
この市松文様は、染付の練習に最適です。線描きが均等に描けるようになったら、だみにも是非挑戦してください。 絵付けの職人さんが”だみはそんなに簡単にできませんよ”と言ってましたが、やる気になったらできますね。
兎に角、だみ筆に流れない程度にたっぷりと呉須を含ませ、しっかりと溜め、それを引っ張って広げてやる。 この呉須をたっぷり溜めて、最後に筆を寝かせて、余分な呉須を吸い上げる事が出来れば、大丈夫です。たっぷり溜めるのは勇気が要ります。なれるために、小さな陶片などに丸や四角などを骨書きして、水で練習してください。筆を立てて溜めて、今度は筆を寝かせて吸い戻す感覚を身に付ければ、溜めることが怖くなることはなくなると思います。
もう一つ加えれば、たっぷり溜めた呉須を広げるのは、器を少し傾けて筆先でひっぱれば、簡単に広がります。呉須が、多すぎたら器を水平にすれば、枠線の骨書きが堤防になって、枠外に溢れるのを防いでくれます。この最初のたっぷり溜める量のコントロールができれば、それほど難しくないですよ。

こちらも、6寸皿の絵付け。 この絵柄は”鉄綿花”と言う花で、木綿の花のようです。 昔から、掛け軸などに良く描かれるモチーフで、染付には面白いですよ。
花は葉っぱと言うものは、言い方は悪いですが、誤魔化し易い題材で、この様なものからスタートすればいい作品が出来ると思います。
こちらは朝顔の絵付けです。これも鉄綿花などと同じで描きやすい題材だと思います
こちらは、朝顔を大きくした絵付け、全体的にだみが濃ゆそうですが、還元焼成で、だみの濃淡や骨書きの線の濃度がはっきり出てメリハリのある作品になるのではと思います。
やる気になれば、それなりの練習をすれば、だれでもできます。 是非、チャレンジしてください。